房総の東の付け根である銚子、ちょうど利根川の河口付近が鮃の漁場だ。ごくごく浅い漁場で、水深は15m前後。ここに中羽鰯を泳がせて鮃を釣る。鰯の群れとタナの差によって大きさが変わるが1月の寒鮃だ。きっと脂の乗った上等なものが釣れるだろうと期待していたが、どうも勝手が違う。
釣り上がってくるのは、体調にして40から50cmで食べ頃なのだがどうにもあの肉厚感がないのだ。
タナを上目にして大きいものを狙ってみれば今度は食わない。イライラと戦いながら時計を見ればもう起き上がりの時間だ。船長のサービスで時間を延長してくれるが、なんともならない。
終わってみればソゲ(30cm程度)が3枚と50cmに少し足りないものが7枚。10枚は大漁といえば大漁だが今ひとつ満足感に欠ける出来だった。
ただ、この寒鮃にしては薄い鮃だからこそ、やってみたかった料理に思い切って挑戦ができる。それは鮃のすがた干。つまりは干物だ。早速帰宅したら丁寧に鱗をこすり、ワタを抜いて、漬け汁を作る。一つは海水と同じ濃さの塩水。だいたい3.5%程度の濃さで作る。そして魚醤を薄めた着け汁だ。これには水に能登の魚醤「魚汁」を混ぜたつけ汁に鮃を漬けて干したもの。濃さは適当だがあまり濃すぎないほうがよい。これを2時間ほど漬けて、冷蔵庫でラップをせずに1日乾燥。その後天日で半日干して完成だ。
図らずも元旦に能登地方で大きな地震が起きたばかり。こんな小さなことながら能登の良さを伝えて応援したい。
干し上がった鮃には銚子の老舗「山十」さんの「ひ志お」を塗って弱火でじっくり焼いてみた。香ばしさとしっとりとした鮃の身が口の中で宴を開いてくれる。これに石花海で上げた鬼笠子の鰭酒をすする。なんとも言えぬ冬の香りの余韻がいつまでも続いてくれた。

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